HorliX(という Horos/OsiriX ベースの画像ビューア。私がメインで開発している)はご承知の通り薬機法の認証/承認を受けていないし、(私が基本設計をしたわけではないので)積極的に取りに行こうともしていない。

旧薬事法が医療機器やプログラム医療機器を対象にするため薬機法に衣替えしたのはつい最近のことで、実質的には穴や抜けが多い。しょちゅう通達の類が出されている。
アメリカでは若干事情が違うようなのだが、日本では、原則として「医療情報を単純に記録・閲覧するプログラムは『プログラム医療機器』には該当しない」という考え方がベースにある。
よく指摘されるように電子カルテは臨床診断上重要だが対象になっていないのは、こういった考え方がベースにあるからだ。だからかなり派手な「広告」を打っても規制の対象にもならない。厚労省内部では「電子カルテの医療機器化」というのは検討されているようなのだが、実現される気配は今のところ微塵も感じられない。
最近では、Apple Watch の心電図アプリが当局の認可を通ったということで話題になったが、これは
・心電図を測定するという機能それ自体が「医療機器」に該当する
・脈の不正を検知してそれを医療機関に通知するという機能が医療機器相当とされた
からだろう。
単に脈自体を計測しデバイス内部に記録するだけだったら、医療機器には該当しない。
ただし、原則は原則。そこでも例示されていたが、下の例のように「積極的に診断をアシストする」ような機能を持ったプログラムが規制の対象になる。
これはわかりやすい例かな。
でも、「良悪性鑑別」くらい積極的な機能を持っていてもクラス3(この上により審査基準の厳しいクラス4というのがある)止まりです。
話を HorliX に戻す。
原則、無償で配布しているため、宣伝の類は一切やっていないにもかかわらず、おかげさまでそれなりに普及した。
なのだが、こういった状況が面白くない人もいるらしく、そこ由来と思われるクレームがたまにくる。「医療費の削減」や「医療機器の価格適性化」が政策レベルでの方針なのだから、使えるものはうまく有効活用すればいいのにと私なんかは思う。
実務的には、そのクレームは地方自治体の薬務担当が対応するのだが、その多くは臨床現場に出たこともなければ系統だった知財関連の教育も受けたこともない公務員(医療系資格は持っていても薬剤師免許程度)だ。薬事に関してはそれなりに対応できると思うが、正直、医療機器やソフトウェアに関連する問題を適切に処理できる能力を十分に備えているとは思えない。別に彼らを責めているわけではなくて、法の対象の拡大が急すぎるのだ。
先日も薬機法の条文をとんでもないふうに解釈して問い合わせがあったのだが、「基本的なところで勘違いしてませんか?」とレクチャーを織り交ぜながら反論したところ、以降、ぶっつりと反応がなくなった。(これは記録にも残っていることなので言ってもかまわないと思うが、医療画像が閲覧可能なビューアはすベて医療機器に該当すると思っていたらしい)
さすがに私も夏場でイライラしていたので、自分たちがどこで間違ったか書面で回答するよう要求したところ、けっこう素直に謝罪してくれた。
でも、こんなみっともないことするくらいだったら、最初から「判断できない」というスタンスでいればいいのにと思う。また、横浜市の場合、組織の組み方が独特なので、そもそも「担当」であるのかもアヤしい。
実際、この手の分野は過渡期で、法の整備が追いつてないという認識が一般的であり、その旨の通達も厚労省から出されている。現状の臨床現場・開発現場には強い介入をしないという担当者が(地方自治体では特に)ほとんだと思う。通達も「地方自治体職員が独自判断をするな」という趣旨の文言が盛り込まれている。
(某所でこの記事書いたところ、けっこう評判がよかったようなので、加筆・修正の上、こちらにも転載しました)
HorliX , OpenDolphin-2.7m 開発者
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